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Update:09/10/23
Text&photo:Kentaro Kawamura
Tytle:First bread making

すこし前のことだが、今の子供たちに経験させてあげたいことを叶えに、アポを快諾していただいた宗谷は豊富町国道沿いに佇むパン工房サロベツマイハート〝夢工房〟さんに伺った。

ここのパン工房は、以前から写真撮影やイトウ釣りで原野に出かけた帰りに立ち寄り、お土産麺麭を買ったことがあった。
店主は奥の工房で一心に生地を捏ねたりパンを焼いたりと忙しそうなのだが、
僕や客が店に入るといつも優しい笑顔で迎えてくれる。
それがとても気持ちがよく、良い写真が撮れなかったときも、一匹も魚が釣れなくても、
このパン工房に寄るとホッと気持ちが安らぐのだ。
そしてパン好きな自分がここを素通りすることが難しいのもあるのだけれど、、、。
ここのお店の僕がお気に入りのパンは〝バターブレッド〟で、
生地にバターを練りこんで焼いた中はふんわり表面は香ばしいトーストである。
午後には売り切れていることが多く何度か泣きを見たが、そんなときはバゲットで凌ぐ。
これも美味い。

どうしてもここで彼女たちにパンのつくり方を体験させたいと思い 、
店主にお願いしたところ二つ返事で了解してくれたのだった。(お忙しい中、心より感謝いたします。)

生地を丸め、平らにしたり伸ばしたり顔を書いたりと、店主に手解きを受けながら、すぐにそれを手で形にする。
子供たちの手の器用さには驚かされました。
自分は35度の工房の室温とストロボを装着した一眼レフの重さに汗だくになり、
店員さんも見かねてクーラーの下に招いてくれ、
それも束の間、頑張っている子供たちに負けないようシャッターを切ったのでした。

次から次へとその小さな手で形作られたパン生地は、二次醗酵を経てオーブンに入れられ、
しばらく経つとこんな風に焼きあがりました。
自分も焼きたての餡パンをいただいたが、ほっかほかの餡パンがこんなに美味いものかととても驚きました。

彼女たちは自分たちでつくったそのパンを、出産のために入院している母親へ届けるのだと、
パンが上手にできた嬉しさで向かう車内は歌声が途絶えませんでした・・・。

北海道の最北に位置する宗谷の地に生まれ、中学2年のときに疑似餌釣り(ルアーフィッシング)というものにのめり込んだ。
その頃は右も左もわからず、ただただ川へ向かって金属の疑似餌をキャスティングしていた。
のめり込んだのは、間もなくして〝イトウ〟という魚を釣り上げたからだと思う。 ロッドも持たず、その川、その当時の場所に立つ。
この川の水の中の様子は大体わかっている。 それにはかなりのルアーロストがあったからというのもある。
そしてどこから魚が出やすいかも、どこに魚が付いていることが多いかもわかっているつもりだ。 

ここはホームグラウンドであり、当時実家からロッドを握りウェーダーを履き、歩いて10分でこの様相を眼前にすることができた。
そしてこの対岸ヨシ原のオーバーハングにイトウがよく付いていた。
けれども、それは今でもあまり変わっていない。
今ではこの場所をカメラだけを持って立つことが時々ある。
たった5分いるだけでも、二十数年前の記憶をリアルに思い起こすことができるのだ。 

それだけで気持ちが落ち着くのである。

湿原の朝陽を水面に映し、薄っすらともやがかかる幻想的な情景を眺める。
秋の紅葉も綺麗で良いけれど、僕はこんな宗谷の風景に魅了されている。
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